昨年「電子書籍元年」と言われたことがありましたが、日本ではいまだに普及していません。ケータイがらみの電子書籍はずいぶん前からあるようですが、その市場規模はせいぜい数百億円。紙の書籍の市場規模は、出版不況と言われてはいても、2兆円とも言われていますので、電子書籍の市場はわずかなものです。
電子書籍と言えばiPadですが、今のところほしいと思いません。理由は使い道が思い浮かばないからです。iPadは基本的に受け身のデバイスで、人が作ったコンテンツをモバイルで鑑賞するしかなく、PCのように、オリジナルのコンテンツを作成するにはまったく不向きです。宮崎駿さんがタッチパネルの操作をみて、マスターベーションと言ったのは、iPadの機能の本質を見抜いていると思います。
しかし、受け身で電子書籍を読む、ということが、真っ先に思い浮かぶ使い道なのですが、日本では新刊が次々電子書籍化されていないため、iPadもキンドルも使い道がないのです。
今日の報道によると、アマゾンが日本国内130の出版社に全書籍の電子化を迫ったようです。それだけでなく、日本独自の著作権のあり方を欧米のように改革した上で、以下のような条件を付けているそうです。
「アマゾンは出版社の同意なく全書籍を電子化できる」
「売上の55%はアマゾンに」
「価格は書籍版より必ず低くせよ」等々・・・。
日本の出版界は長らく出版不況と言われていながら、なすすべなくじり貧状態です。実際は「なすすべなく」ではなく、「なすべきこともせず」、今回のアマゾンの提案にも反発しているのです。
ジョブズ氏の伝記の販売価格を見れば、日本の出版業界の電子書籍に対する姿勢が垣間見えます。
伝記は講談社から出るのですが、ハードカバーも電子書籍も同じ3990円! アメリカでは、電子書籍は912円、ハードカバーが1359円だそうです。日本の書籍のほうが紙質も製本もいいそうですが、それでも高すぎです。
このことから分かるように、日本の大手出版社には電子書籍を普及させようという考えはまったくないのです。
再販制度というぬるま湯の中から脱却しようとする姿勢はないようです。だから、アマゾンの今回の提案に、激怒している、頭の弱い出版関係者もいるようなのです。
いずれ電子書籍が紙媒体を上回る時代が来るでしょうから、日本はもたもたしていると、今のままでは、世界の流れから遅れを取ることになりそうです。
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